今そこにある“隠れ冤罪”
無罪の春

2025年05月号

警察・検察の捜査の適正性が問われる判決が短期間に集中した(札幌市中央区の裁判所庁舎)

前年度末に相継ぎ言い渡し
不同意性交などで判決確定


年度が改まる直前の3月中旬から下旬にかけ、地元・札幌の裁判所で刑事事件の無罪判決が相継いだ。大きく報じられた事件にからむ事実上の一部無罪判決は確定が持ち越されたものの、過失運転や不同意性交等に問われた被告人らの潔白は捜査側も認めざるを得ず、年度明けと前後して無罪が確定した。いずれのケースでも、問われているのは捜査のあり方。長期間の身柄拘束や結果としての公判請求は、本当に必要だったのか――。

取材・文=小笠原 淳

「不同意」被害訴える女性
通報せずホストクラブへ


「当然の結果でした。これを罪にしていたら多くのケースで『言ったもん勝ち』になってしまいます」
 憮然として訴えるのは、不同意性交などで起訴された19歳(事件当時)の男性の付添人・弁護人を務めた青木康之弁護士(札幌弁護士会)。本誌前号発売直前の3月14日、その裁判で札幌地方裁判所(井戸俊一裁判長)が示した結論は、検察の求刑を大きく下回る執行猶予つき有罪判決。最も争いがあった事実については無罪が言い渡された。
 裁かれた“事件”が起きたのは、昨年6月下旬のこと。被告男性は札幌・ススキノの路上でホストクラブ帰りの女性(当時20)に声をかけ、意気投合して地区内のビルの階段踊り場で性的行為に及び、別れ際に女性の鞄から財布を抜き盗ったとされている。
 男性は当初、これとは別の容疑で逮捕されていた。右の一件の1カ月ほど後にコンビニエンスストアでTシャツを万引きし、また泥酔した少女にキスをしたとして、窃盗と不同意わいせつに問われたものだ。この捜査の過程で先の女性との件も事件化されることになり、不同意性交等で再逮捕されたわけだ。
 Tシャツ盗、少女へのキス、及び財布盗については容疑を認めていた男性だが、ビル階段での性的行為については相手女性との合意があったとして不同意性交を否認。付添人となった青木弁護士も同容疑では起訴すべきではないとの考えだった。ところが男性の少年審判を行なった札幌家庭裁判所は、事件を通常の刑事裁判に付すべきとしていわゆる「逆送」を決める。検察は起訴に踏み切り、かくして当時19歳だった男性は刑事被告人となった。青木弁護士は当時の判断に苦言を呈し、「審判員や検察官は当事者の言い分にきちんと耳を傾けるべきだった」と批判する。

検察は複数の事件で控訴・上告を断念する結果に(札幌高等・地方検察庁が入る札幌市中央区の札幌第三合同庁舎)

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無罪が確定した事故について、弁護人は「そもそも逮捕が不当だった」と訴える
(苫小牧市の札幌方面苫小牧警察署)

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