森町国保病院の診療報酬不正請求事案を追う
機能しなかった「万全の体制」
のしかかる3億円の返還義務

2025年06月号

巨額の返還義務を負うことになった森町国保病院
(同町上台町)

道南の渡島半島にある名峰、駒ヶ岳の麓に広がる自治体、森町(岡嶋康輔町長・人口約1万3千人)。ここで明らかになったのが、森町国民健康保険病院(60床・開設者森町長・以下森町国保病院)の診療報酬不正請求事案だ。昨年暮れに国から指摘を受け、返還を求められることになった金額は実に3億円超え。事務方に加え経営企画統括監まで配置し運営体制に万全を期していたはずの森町国保病院でいったい何が起きていたのか──。

(本誌編集長・工藤年泰)

放置され続けた不正請求


 森町国保病院は、1953年に森町立診療所としてスタートしたのがルーツ。以後国保病院への転換を経て一般病床87床で運営していたが、病床稼働率の低下や人員不足からベッドを一部返上し60床体制に。その後は医療環境の変化に伴い、近年は一般病床22床、地域包括ケア病床38床という体制になっていた。
 地域包括ケア病床とは、急性期治療を終え病状が安定した患者に対して在宅や介護施設への復帰に向けた支援を行なうための病床で、リハビリテーションや退院支援などを通じて患者が自宅や施設で生活できるようサポートすることが求められる。例えば函館などで大きな手術をした患者の受け皿として機能しているのが森町国保病院ということになる。二次救急も担う同病院は、文字通り地域にとってなくてはならない医療機関という位置付けだ。
 この森町国保病院が国から診療報酬請求に関する指摘を受けたのは昨年12月19日。この日、北海道厚生局が行なった適時調査の総評で地域包括ケア病床における入退院支援加算、地域包括入院医療管理料、看護補助体制充実加算が基準を満たしていないと通告されたのだ。
 どういうことか。この問題が俎上に乗った本年3月議会における岡嶋康輔町長の答弁などによれば、入退院支援加算の請求に必要な看護師をはじめ地域包括ケア病床に必要な社会福祉士と理学療法士が他の業務も兼務しており、規定されている「専従」ではなかったという。看護補助体制充実加算についても看護補助員の基準値を満たしていなかった。
 簡単に言えば、各部署における医療従事者の配置が基準を満たしていなかったにもかかわらず請求を続けてきたということだ。

開設者として責任が問われる岡嶋町長(森町の公式ホームページより)

3月議会でこの問題を追及した伊藤副議長は、「診療報酬を返還すればそれで済むという話ではない」と指摘

開設者として責任が問われる岡嶋町長(森町の公式ホームページより)

3月議会でこの問題を追及した伊藤副議長は、「診療報酬を返還すればそれで済むという話ではない」と指摘

森町国保病院の診療報酬不正請求事案を追う

恵庭・障碍者虐待で新事実
当事者不在の休業補償申請

苫小牧・老舗ガス業者
パワハラで新証言

がん拠点病院「恵佑会札幌病院」の泌尿器科部長に久末医師
ダヴィンチ手術、待望の再開

森町国保病院の診療報酬不正請求事案を追う

恵庭・障碍者虐待で新事実
当事者不在の休業補償申請

苫小牧・老舗ガス業者
パワハラで新証言

がん拠点病院「恵佑会札幌病院」の泌尿器科部長に久末医師
ダヴィンチ手術、待望の再開

目次へ

© 2018 Re Studio All rights reserved.