堀の中に静かな動揺
どうなる、「自弁」

2025年05月号

道内最大の施設では本年3月に物品販売窓口が休止となったが、今のところ受刑者などから苦情や抗議の声は上がっていないという
(4月上旬、札幌市東区の札幌刑務所)

刑務所など差し入れ運用変更
敷地内購買窓口が相継ぎ休止


逮捕・起訴されて裁判を待つ人たちや有罪が決まって懲役刑などを受ける人たちが過ごす刑事施設で、静かな変化が起きている。外部の人たちが施設内へ日用品や食料品を差し入れる窓口が、この春までに順次休止されることになったのだ。受刑者などの権利が充分に尊重されなくなるおそれがある事態だが、なくなった窓口の復活は簡単ではなさそうだ。不意の運用変更には、どういう事情があったのか――。

取材・文=小笠原 淳

道内、昨年から順次終了


 収容定員2500人あまりという北海道内最大の刑事施設、札幌刑務所(札幌市東区、遊佐篤史所長)。その面会人待合室に左のような貼り紙が掲示されたのは、年度替わりを控えた本年2月中旬のことだった。
《令和7年3月31日(月)をもって、面会人に対する自弁物品等(未決拘禁者については、し好品、食料品及び飲料を含みます。)の販売が終了することになりました》
 文言に登場する「自弁物品」という熟語は、施設の外ではほとんど使われる機会がない“業界用語”の1つ。刑務所や拘置施設などで過ごす人たちが、施設から提供・貸与される物とは別に各自の判断で購入できる物品のことだ。
 たとえば下着やタオル、石鹸、歯ブラシといった消耗品。ボールペン、ノート、定規などの文具。外部と連絡をとるための郵便切手や便箋、封筒など。被収容者の高齢化を反映し、入れ歯安定剤や保温下着といった物品の扱いもあり、女性用施設ではこれらに加えて化粧品やヘアネット、生理用品などが購買可能だ。さらに刑事裁判の判決確定前、いわゆる「未決」の立場で拘置施設に収容されている人の場合、右のような日用品のほかに食料品の自弁購入も認められている。施設内に備わる物品一覧表には、ツナ缶やソーセージ、海苔などの軽食、煎餅やチョコレートなどの菓子、カップ麺や各種調味料、果物といった“メニュー”がずらり。コーヒーやお茶、コーラなどの嗜好品も揃い、バナナをキロ単位で扱っていた施設もある。
 これら自弁物品のリストは、施設を訪れる面会人の待合室にも常備されている。もとへ、つい最近まで置かれていたが、この春までにその姿を消した。各施設の敷地内に設けられていた物品購入窓口が休業となり、それまで認められていた外部からの差し入れができなくなったのだ。北海道(札幌矯正管区内)では現在稼働中の6刑務所のうち、最も早かった網走刑務所で昨年2月に取り扱いが休止、同6月には月形刑務所、7月に帯広刑務所、本年1月に函館少年刑務所が後に続き、3月末の旭川刑務所と札幌刑務所の運用変更をもって道内全施設で販売終了となった(拘置施設など各支所を含む)。

来年度から自弁物品事業に参入する意思を示した業者が何社あったか、現時点ではあきらかにされていない(法務省矯正局が公開している『募集要項』)

来年度から自弁物品事業に参入する意思を示した業者が何社あったか、現時点ではあきらかにされていない(法務省矯正局が公開している『募集要項』)

乗っ取りに揺れるフットサル蹴
アルバイトの若者告発

江差看護学院パワハラ
学生自殺で元職員が重要証言

刑務所「自弁」差入れ事情に静かな異変

カレス記念病院がオープン
災害に強く利用者目線を追及したホスピタル誕生

乗っ取りに揺れるフットサル蹴
アルバイトの若者告発

江差看護学院パワハラ
学生自殺で元職員が重要証言

刑務所「自弁」差入れ事情に静かな異変

カレス記念病院がオープン
災害に強く利用者目線を追及したホスピタル誕生

目次へ

© 2018 Re Studio All rights reserved.