自衛隊vs自衛官③
「求償」可能性に元隊長は絶句 問われる幹部の責任

2026年11月号

現職自衛官が意を決して組織を訴える裁判を起こしてから、まもなく2年半が過ぎる
(北部方面総監部がある札幌市中央区の陸上自衛隊札幌駐屯地)

自衛官パワハラで元上官ら尋問
現職隊員の訴訟、年内に結審へ

「通報というテロ行為を許すわけにはいかない」――。部隊内のハラスメントを告発した現職自衛官がテロリスト扱いされた事件。公益通報を理由に不利益を蒙った隊員と彼を追い込んだ組織との闘いが、札幌の裁判所で佳境を迎えた。本誌前号締め切り直後の9月上旬に行なわれたのは、ハラスメント行為やその隠蔽などに関与したとされる元上官らの証人尋問。賠償命令がほぼ確実な裁判で原告側が求めているのは、加害当事者が身を切る真の意味での賠償だ。
(小笠原 淳)

犯人捜し、元団長は否定


 提訴から2年あまりが過ぎる裁判が証人尋問に到ったのは、奇しくもちょうど2年前に最初の口頭弁論を迎えた日と同じ、本年9月9日のことだった。

――2021年5月、2回めになるハラスメント投書の報告を受けたと。投書は匿名だが「また※※(原告男性)だろう」と思ったか。
「はい、彼だろうと思いました」
――内容は事実無根と思った。
「確実に事実無根だと思いました」
――誹謗中傷だと。
「はい」
――20年のハラスメント調査で加害事実がなかったという結論を出したのに、また投書で蒸し返してきた、迷惑だ、そういう認識だった。
「迷惑というより、何がやりたいのかわからないな、と」
――「何が言いたいのか通報者に訊いてこい」と指示したか。
「はい」
――「筆跡鑑定しろ」とは。
「それはわかりません」
――総監部からあなたに対し「通報者を特定しないように」と電話で注意喚起した、との記録があるが。
「…憶えてないです」
――あなたとしては、通報者が誰なのかはわかりきっていたので「特定」する必要はなかった、ただ「訊いてこい」と指示しただけだと。副団長は「特定」を指示されたと供述しているが、これは誤りか。
「…誤りだと思います」

 札幌地方裁判所(吉川昌寛裁判長、濱岡恭平陪席判事、山守皓己陪席判事)の証言席に着き、過去の匿名通報への対応を問われることになったのは、そのころ陸上自衛隊北部方面隊で混成団長を務めていた男性。法廷ではその日、彼を含む現職・元職の男性自衛官4人、及び裁判を起こした現職男性の計5人が尋問に応じることになった。
 既報の通り、原告の男性自衛官が国を訴える裁判の提起に踏み切ったのは、当時所属していた「第一陸曹教育隊」で見聴きしたパワーハラスメントを匿名告発し、その公益通報行為を理由に不利益な取り扱いを受けたため。職場内の“犯人捜し”で通報者と特定された男性は「通報はテロ行為」などの暴言を受けたほか、人事上でも不利益を蒙ることになったという。一連の被害への賠償を求める訴えを起こしたのは、一昨年6月のことだった。

今も自衛隊に身を置く原告男性は、法廷での元幹部らの発言を「不都合な事実を覆い隠すための言い逃がれだった」と厳しく批判する(証人尋問終了後に寄せられたコメントの全文)

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幹部の責任

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市ヶ谷の陸上幕僚監部への匿名通報が北部方面に漏洩し、通報者が特定された――「当時の幹部らが階級・指揮権・人事権の『三種の神器』を私物化して暴走した」と原告男性(9月9日夕、札幌市内)

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