3台目の手術支援ロボット「Мako4」を導入した我汝会の木村正一理事長に訊く
恵庭と札幌で正確・安全な人工関節置換術体制を確立

2026年10月号

我汝会えにわ病院に導入された最新型の「Мako4」と木村理事長

(きむら・しょういち)1960年新潟県出身。88年旭川医大卒業、89年北大整形外科入局。函館中央病院、美唄労災病院などを経て2001年4月えにわ病院に勤務。05年整形外科部長、11年理事を経て17年1月に医療法人社団我汝会理事長に就任。医学博士、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医

Medical Report

近年、前立腺がんは男性の罹患率でトップのがんとなり、高齢化の進展もあって9人に1人が発症する時代を迎えている。そうした中、社会医療法人北腎会が運営する坂泌尿器科病院(坂丈敏理事長・院長/札幌市西区・59床)が前立腺がんの早期発見と治療に取り組み、注目すべき効果をあげている。特に力を入れているのが、事前に撮影したMRI画像とリアルタイムのエコー画像を重ね合わせながら正確な穿刺を行なうMRIフュージョン生検(MRI融合標的前立腺生検)。同院の副院長で診療支援部長の笹尾拓己医師(58)に、早期発見の決め手となるMRIフュージョン生検と最新の前立腺がん治療について訊いた。
(7月27日取材 工藤年泰・武智敦子)

京極 虐待疑惑
渦中の町議は語る

札幌市市有施設照明
LED化事業に噴き出る疑義

余市のワイン戦略
人口減少の中で所得を向上

手術支援ロボット「Mako4」導入の我汝会木村理事長に訊く
正確・安全な人口関節置換術体制を確立

札幌でもロボット支援手術


「Мako」はアメリカのストライカー社が開発した整形外科分野の手術支援ロボットで、欧米など世界各国で導入が進んでいる。日本では2019年6月に膝関節と股関節の人工関節全置換術が保険収載され、現在では全国約150の医療機関で稼働していると言われる。
 道内では20年6月に我汝会えにわ病院が初めて導入。3年後の23年には人工膝関節置換術と人工股関節置換術の医療チームがそれぞれ使えるよう2台目を入れ、今年7月に3台目となるMakoの最新型を導入したという流れ。これに伴い2台目はグループ傘下の我汝会さっぽろ病院に配置し、10月からの運用を予定している。
 膝関節や股関節は立つ、歩く、しゃがむという生活上必要な動作を担っている。変形性の膝関節症や股関節症を発症すると薬物療法やリハビリを行なうが、症状が改善しなければ手術が選択肢となる。この場合、症状が中期であれば傷んでいる側を人工関節に置き換える片側置換術、末期になると全置換術が必要となる。
 Мakoが導入される前の人工関節置換術はX線検査などで術前計画を立て、医師の手で手術を行なっていたので、治療は術者の経験に負う所が大きかった。このため骨を削る部分が不正確で痛みが残ったり、術後すぐにゆるみが生じるなどのヒューマンエラーも散見された。
 一方、Makoによるロボット支援手術では、術前にCTで撮影した骨格の画像データをコンピュータ処理し3D化。そのデータを元に人工関節のサイズや設置する位置、骨を切除する部位や量などを決める手術計画を作成する。手術中にはO脚やX脚といった膝関節の変形を矯正し、関節が安定する適切な人工関節の位置をコンピュータによる3D画像でリアルタイムに確認、調整。医師はロボティックアームを手に持ち、先端に取り付けた器具をロボットアームの誘導に沿って操作し、骨を切除する。
「人工関節置換術は、術中に赤外線モニターを用いながら患部を正確に測定するナビゲーションシステムが普及していますが、人間の手で1ミリ、1度単位の精度で手術をするのは非常に難しい。その点、Makoは人の手による誤差をほとんどゼロにできるので精度が高く安心な手術ができます」(木村理事長、以下同)

典型的な変形性膝関節症(左の2枚)と人工膝関節全置換術後のレントゲン写真(同)

木村理事長によるМ ako を使用した人工膝関節全置換術の様子(提供:えにわ病院)

Mako による人工関節置換術が可能になる我汝会さっぽろ病院(札幌市東区)

典型的な変形性膝関節症(左の2枚)と人工膝関節全置換術後のレントゲン写真(同)

木村理事長によるМ ako を使用した人工膝関節全置換術の様子(提供:えにわ病院)

Mako による人工関節置換術が可能になる我汝会さっぽろ病院(札幌市東区)

より患者満足度が高い治療へ


 今回、えにわ病院が導入したのは「Мako4」という最新型で、より高い視認性と手術効率の向上が期待できるという。木村理事長はえにわ病院導入前に現物を確認しており、「将来の機能拡充にも対応した手術支援ロボットとして設計されていることが分かりました。まだソフトは入っていませんが、これまで以上に正確かつ安全な手術の実現と治療成績の向上が期待されます。当院では、すでにMako4を手術に使っていますが、以前の型より治療時の動きが軽くなるなど進化を実感しています」と話す。
 えにわ病院では年間2700症例の整形外科手術を手掛けており、このうち人工膝関節と人工股関節関連の件数は年間1000症例を超す。6年前にMakoを入れてからは、人工膝関節置換術は600症例以上、2台体制になってからは1000症例を超している。症例を積み重ねることで次のような気づきもあった。
「治療の結果を患者さんが評価する患者立脚型調査では、人工膝関節の治療は人工股関節に比べ満足度が30%劣ることが分かっています。これまで、人工膝関節置換術では膝を真っすぐにすることによってO脚やX脚も治り、長期に保つと言われており、これを目標としておりました。しかし、近年は僅かなO脚やX脚など患者さんの生まれながらの下肢の形を考慮した方が患者さんの満足度が高いのではないかという研究が出てきました。医者が満足しても患者さんには違和感があるかもしれない。こうした知見が出てきたのも、人間の手では限界のある1度、2度の微調整ができるМakoが出てきたからだと思います」

変形性膝関節症の病態と治療


 木村理事長の専門である変形性膝関節症は中高年に多い病気で、発症の背景にあるのは加齢、肥満など。他には遺伝性の素因が関与していたり骨折による変形や靭帯損傷、クッションの役割をする半月板が外傷を受け、その後遺症として起こるケースもある。患者の約8割は女性で、軟骨の保護などに重要な役割を果たす女性ホルモン(エストロゲン)が閉経後に急速に低下することなどが発症と関わっていることが知られている。患者の多くは両足の膝が変形しており、片方だけというのは若い時の半月板損傷や靭帯損傷、骨折による変形などによることが多い。
 変形性膝関節症は進行すると階段の上り下りや安静時にも痛みを感じるが、木村理事長はこの痛みについて、「軟骨には血管がないので、一度傷つくと基本的に再生しません。最後には軟骨が全くなくなり、露出した骨と骨同士が歩行や起立時に直接ぶつかり合うのでものすごく痛い。骨と骨がぶつかり合うようになったらかなり重度です。周りにある滑膜が炎症を起こして滑膜炎になっても痛みを感じることもあります」と説明する。
 初期の症状としては、立ち上がりや歩き始めなど動作の開始時に痛みを感じ、休むと痛みはなくなる。中期になると、正座や階段の上り下りが困難になる。末期では変形により膝がピンと伸びなくなり、歩いたり座ったりすることが困難になる。
 初期であればリハビリで膝の筋肉を鍛えることで進行を抑制することができる。薬物療法ではヒアルロン酸ナトリウムを関節内投与することで症状を緩和する。
 以前は「APS療法」という再生医療で、患者の血液から分離した自己たんぱく質溶液を膝に注入し症状を緩和させる治療を自由診療で提供していたが、現在はそれに代わり「PDF‐FD療法」(凍結乾燥血漿由来因子)を行なっている。これは、患者の血液中の血漿から成長因子を取り出し、凍結乾燥加工したものを溶かして膝に注射する治療法だ。これもAPS療法と同様に自由診療だがAPS療法よりは安価であるというメリットがある。
 これらで症状の改善が見られない場合は人工膝関節置換術が選択肢となるが、木村理事長は金属アレルギーのある患者以外は全てMakoを使用しているという。
「人間の手より正確性と安全性が担保されているからです。Makoで治療を受けた患者さんから『もっと早く受ければよかった』『人工関節が入っていることを忘れてしまう』という声をいただくこともしばしば。痛みから解放されることによるQOLの向上は大きいと思います」
 こう語る木村理事長だが、今後ロボット手術しか知らない外科医が増えることには危惧を抱いているといい、「しっかり自身が手術の基本を身につけたうえで、ロボットを使いこなすことが大事です」と釘を刺す。

整形外科領域の“灯台病院”に


 我汝会グループでは、傘下の「我汝会さっぽろ病院」(札幌市東区・春藤基之院長)の受け入れ体制を強化するため2021年に病床の再編を行なっている。まず「きたひろしま整形外科」(北広島市旭町)の19症を無床化した上で、さっぽろ病院を50床から69床に増床。さらに「あすなろ整形外科」(札幌市厚別区)の19床を移管し88床体制にした。このような増床を受けて今年7月と8月のさっぽろ病院の手術件数は過去最高を記録し、病床もほぼ満床で稼働しているという。
「札幌圏の需要を見込み、えにわ病院の10床~20床をさっぽろ病院に移管する構想もありますが、実現に当たってはさっぽろ病院の増築が必要になるので悩ましいところです」
 サテライト機能を有する「きたひろしま整形外科」では週に1度、木村理事長が診療を行なっており、手術が必要な患者はえにわ病院が対応している。
「地域貢献に向けては、北広島のようなサテライトを稚内や北見、根室など北海道各地ににつくるのが理想です。しかし院長に相応しい医師がいなければクリニックは成り立ちません。地域医療に対するモチベーションの高い医師をいかに集めるかが今後の課題になると思います」
 それでも最先端の医療を提供するえにわ病院には全国各地から若手の医師が研修に訪れており、現在股関節チームで働く4人も以前に、ここで学んだ医師たちだ。
 木村理事長は「幸いなことに当院はドクターの数では恵まれています。膝や股関節などの病気で悩んでいる患者さんにとって灯台のような役割を果たしていくことができれば」と将来を見据える。
 口コミでの広がりも合って患者は釧路や根室、稚内、北見、青森、東京など道内外から訪れるが、木村理事長は初診の患者には、必ず「どこから来たのですか」と聞くようにしているといい、次のように取材を締めくくった。
「遠方から受診する患者さんについては、本人の予後を考えると地元に近い医療機関で治療を続けるのが望ましいので、そのような時は知り合いの医師を紹介しています。地方で苦しむ患者さんのためにも我汝会のネットワークを広げていきたい」


医療法人社団 我汝会
えにわ病院

恵庭市黄金中央2丁目1番地1
(JR恵庭駅東口前)
☎0123‐33‐2333
HP:https://www.eniwa-hosp.com//

京極 虐待疑惑
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