メンタルエース
連載 第1回
軽度の発達障害に気付かれずに育った少女は、
なにを求めてホストの世界に心酔するのだろう

2025年07月号

美山 よしの
(みやま・よしの)1977年北海道札幌市生まれ。ススキノ歴25年の現役ママ。現在はラウンジとミュージックバーを営む。日本大学文理学部文学専攻卒

萌絵姫


 卓の上に、光り輝く瓶がいくつも並んでいる。
 それを崇めるように、賑やかなコールがフロア中に響き渡る。
「グイグイ、グイグイ!」
 瓶から発せられるピンク色の光の帯と、シャンデリアの光が幾重にも折り重なって今日の「特別な夜」を飾る。
 満席状態の店内で、ここだけが特別な卓だと周囲に主張しているかのような煌めきに、秋山萌絵は自分と同じ名前のロゴが入ったシャンパンを愛しむように持ち上げた。
「リンダリンダ」のメロディーに合わせたコールに乗りながら、炭酸のきつい酒を瓶ごと口をつけて一気飲みした。ボルテージが最高潮に達した空気の中で、高揚した心がさらに掻き立てられ、身体の細胞のひとつひとつが踊り立つ。
「萌絵姫からひと言!」
「今日は萌絵、頑張りましたぁー!」
 渡されたマイクに向かって呂律の回らない声で萌絵が叫ぶと、萌絵の卓に着くホストたちから盛大な歓声が上がった。

「ありがとな、萌絵」
 隣に座る聖夜が、そう言って萌絵の頭を撫でてくれた。
 どんなに華やかな光景だって、聖夜の笑顔には敵わない。薄くメイクの施された聖夜の顔を、萌絵は満足気に見つめた。
「嬉しい? 聖夜」
「嬉しいよ。めっちゃ嬉しい。初めてのラスソンだよ。全部、萌絵のおかげだよ」
 その日一番の売り上げをあげたホストが閉店前にカラオケで好きな曲を歌うことが出来る「ラストソング」は、そこで働くホストたちにとって栄誉なことだった。
 同時にそれは、担当ホストの「姫」にとって同じ栄華でもある。

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