“核のゴミ”レポートPART45「概要調査」の申請の前に立ちはだかる寿都町内の地質問題
“新知見無視”のNUMO

2025年10月号

寿都町の住民グループが開いた見学会で、教育大名誉教授の岡村聡さんから寿都の地質の成り立ちを学んだ(2022年6月)。町内を広く覆う「磯谷溶岩」の存在がNUMOによる概要調査への移行の前に立ちはだかる

「磯谷溶岩」は喉に刺さったトゲか
概要調査前にどうなる寿都町長選


“核のゴミ”最終処分地の選定に向けた「概要調査」に着手したい事業主体のNUMO(原子力発電環境整備機構)にとって、喉に刺さったトゲのような存在が後志管内寿都町内を広く覆う火山噴出物「磯谷溶岩」だ。国が定めた処分地候補の選定要件では、地質年代が第四紀の火山の中心から15キロ圏は不適地とされている。昨年来、地質学者の岡村聡さん(道教育大名誉教授)らは磯谷溶岩が第四紀火山とする新知見を論文にまとめて関係する学会などで発表し、概要調査への移行に固執するNUMOの動きに一石を投じてきた。それらの経緯をふり返りながら、地層処分政策の矛盾点や寿都町長選の動向などを紹介する。

(ルポライター・滝川 康治)


磯谷溶岩の新知見に目を背け「概要調査」に固執する事業者


「文献調査」が行なわれた寿都町の大部分を覆う「磯谷溶岩」と呼ばれる火山活動にともなう噴出物は、蘭越町との境界に位置する寿都町東部の丘陵地帯に広がる。このため、同町南部の黒松内町との境界と西部の島牧村との境界の数キロ四方だけが「概要調査」の地区選定の要件を満たすとされる。
 北海道教育大名誉教授(地質学)の岡村聡さんらは昨年10月、岩石の年代測定結果をもとに「磯谷溶岩」の活動年代を、約258万年前以降に活動した第四紀火山にあたる、と学会で発表した(記事後半のインタビューを参照)。
 NUMOは、口頭発表であることを理由に、すでにまとめていた「文献調査報告書」に新知見を反映させなかった。さらに今年5月に査読付き論文が発表されたのを受け、ホームページ上に磯谷溶岩についての見解を発表(7月17日)。複数の理由を挙げて論文の内容に反論し、活動年代についても誤差が大きいとして「概要調査以降に調べたい」とした。
 地質学的な新知見に対し誠実に向き合うことを避け、処分事業者のNUMOが「調査の継続」に固執するのはなぜか──。それは、新知見を認めてしまうと、国が定めた「第四紀火山の中心から15キロ圏は処分地候補から除外する」旨の選定要件に抵触するからだろう。「なんとしても処分地選定に向けた調査地域を手放したくない」というNUMOの思惑が透けてみえる。

(おかむら・さとし)1953年、空知管内浦臼町生まれ。84年、北海道大学大学院理学研究科地質学鉱物学専攻博士課程退学。理学博士。同年から34 年間、北海道教育大札幌校で教育・研究に従事。2018年から道教育大名誉教授

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