告発・絶望の学府㊴
「学校には言わないで」

2025年09月号

一連のパワハラ事案の中で最悪の被害といえる自殺事件が起きてから、まもなく丸6年
(8月5日午後、函館市の函館地方裁判所)

江差パワハラ裁判・弁論再開
七回忌前に遺族が法廷で陳述


本誌面で報告を始めてから4年あまりが過ぎた、公立看護学校のパワーハラスメント問題。既報の通り、教員のハラスメントを苦に学生が自殺した事案では、学校設置者の北海道が第三者調査で認定されたパワハラと自殺との因果関係を否定し続けている。苦渋の決断で道を訴える裁判を起こした遺族は今夏、2度めになる口頭弁論の法廷で改めて意見陳述に臨んだ。語られたのは、亡き長男が残した言葉の数々。同じ空間に、深く頷く傍聴人の姿があった。

取材・文=小笠原 淳

「理不尽」「生徒を奴隷に」


「息子は『あそこは理不尽なことが多い』『先生たちは生徒を奴隷のように思っている』と言っていました」
 証言台に着いた女性(49)はそう切り出し、6年前に喪った長男の言葉を法廷で再現し始めた。
「私は、学校の指導方法がおかしいと思い、息子に『学校に言おうか』と尋ねましたが、息子は『言っても相手にされないと思う』『おれはなんとかするから、大丈夫だから』と述べておりました」
 8月5日午後、函館地方裁判所。昨年10月下旬に最初の口頭弁論があったその裁判は、同12月に設けられた日程以降4回にわたって非公開の弁論準備手続きが重ねられていた。8月の審理は10カ月ぶり2度めの弁論となり、原告の女性は改めて口頭で意見を述べる機会を得ることになる。
 女性は2019年9月、看護学生だった長男(当時22)を自殺で喪った。本誌などがこれまで報じてきた通り、長男が通っていた北海道立江差高等看護学院ではその2年後に日常的なパワーハラスメントが表面化、第三者調査を経て教員11人による加害行為が認定されるに到っている。追って新たな調査の対象となった自殺事案でも一昨年春までに少なくとも4件のパワハラが確認され、いずれも自殺との因果関係が認められる結果に。ところが道は遺族との交渉でこの調査結果を真っ向否定、さらにはパワハラの事実自体を認めない姿勢に転じた。「息子は二度殺された」と憤る遺族が問題を法廷へ持ち込んだのは、昨年9月のこと。翌月に始まった裁判が本年8月の法廷(五十嵐浩介裁判長、大門真一朗陪席判事、北岡憧子陪席判事)で2度めの口頭弁論を迎え、そこで本稿冒頭に採録した証言が聴かれることになったわけだ。

たった1人で闘い続けた原告の女性(右奥)はこの日、傍聴に駈けつけた保護者を通じて初めて「父母の会」との縁を得た(函館市の函館弁護士会館)

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