遺品の「お焚き上げ」に潜む危うさとは
そこに供養の心はあるのか

2019年6月号

お焚き上げを待つ遺品の前で僧侶の読経が流れる(5月2日午前、札幌市白石区の「お焚き上げセンター」)

乱立する焚き上げ業者に問われる実態と法令遵守

高齢化社会の進展とともに右肩上がりで増えているのが死亡者の数だ。この中で近年、故人の遺品に関する整理や処分が社会的なテーマのひとつになっている。今回取り上げる「お焚き上げ」も、この遺品処分の一環だ。だが、故人ゆかりの品々を炎で浄化して供養するこの行為は関連法令に留意する必要があり、一歩間違えば違法処理につながりかねない危うさが潜んでいる。先進地と言われる札幌の業界を取材して見えてきた実態とは──。(本誌編集長・工藤年泰)
 

依頼数は年間約1万2千件。札幌に集中するお焚き上げ


 静謐な空間に僧侶の読経が厳かに響く。中央奥の祭壇を取り囲むように人形や神棚、仏壇などが所狭しと並べられている。10人ほどの参列者は回ってきた焼香台で香を焚き、静かに手を合わせる──。
 これは毎週火曜日午前、葬祭関連業者の株式会社さっぽろセレモニーが運営する「お焚き上げセンター」(札幌市白石区)で行なわれている「魂抜き」のひとコマ。同センターにお焚き上げを依頼した関係者向けに開かれているものだ。参列者のひとりは「ごみとして出すのは忍びないので」と記者に話す。供養が済んだこれらの品々は同社が清田区の白旗山で運営している焼却施設に運ばれ、お焚き上げが行なわれることになる。「月単位でみると依頼数は300件前後、年間では4千件弱といったところでしょうか。依頼されるお品で最も多いのは仏壇ですね。そのほかに故人が使用されていた布団や人形なども少なくありません」
 こう説明するのは同センターの阿部清係長。聞けば親族の遺品だけではなく、マンションや高齢者住宅への引越しに伴って置き場が無くなった仏壇などについてもお焚き上げを依頼されることがあるという。
 同社以外で札幌市内に専門の焼却炉を保有している業者は、株式会社焚上協会(同豊平区)と株式会社徳礼(同白石区)の2社だが、徳礼では「今は、お焚き上げは手がけていない」と取材に答えており、同社の扱い実態は不明だ。
 この中で全国に先駆けてお焚き上げを事業化し、事実上全国最大手と言っていい焚上協会の扱いは、ひと月500から600件、年間では7千件から8千件にものぼるという。「私どもは今から十数年前に、お焚き上げ用の焼納場(焼却炉)を東米里(札幌市白石区)に整備しましたが、当時、民間として全国最大規模の焼却炉としてメディアにも取り上げられました」
 

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焚上協会本社(同豊平区)

専用焼却炉での供養風景(写真は白石区東米里にある焚上協会の焼納場)

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